プロペシアの服用でうつになるは本当

FDA(米国食品医薬品庁)が発表

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米国食品医薬品庁(FDA)は、「プロペシアを服用するとうつ症状が出る可能性がある」という研究結果を発表しています。

実際プロペシアの添付文書には、副作用として抑うつ症状と記載もされています。

しかも頻度や因果関係は不明です。あまり調査・研究をしていないので、よくわからないというのが現状です。なぜプロペシアで鬱になるのでしょうか。

プロペシアと鬱の因果関係

そもそも、薄毛(AGA)になる大きな原因のひとつは「男性ホルモン」です。主な男性ホルモンである「テストステロン」がキーポイントになります。テストステロンは、95%が精巣で、5%が副腎で作られます。

生まれる前、お母さんのお腹の中にいる時から作られ、最も大量に分泌されるのが思春期と呼ばれる時期です。

テストステロンは男性らしさをつくるホルモンと言われます。思春期の子供が、筋肉をつけ骨を太くし、たくましく大人の男性に変化していくことを考えればわかると思います。

性欲が出てくるのもテストステロンの影響です。テストステロン値が高い男性は外見だけでなく、内面(精神的な面)も男らしい人になります。

たとえば、冒険心が強かったり、考え方が前向きでリーダー気質であったり、バイタリティあふれる生き方をします。

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逆にテストステロン値が低いと、やる気がなくなったり、筋力が低下して疲れやすくなるといった症状が出ます。

このテストステロンは、5αリダクターゼⅡ型という酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されます。このDHTが薄毛、精力の低下等に作用するホルモンなのです。

プロペシアの有効成分フィステナリドは、5αリダクターゼⅡ型という酵素を阻害し、DHTを産生しないようにする働きがあるため、結果、脱毛を抑制します。

テストステロン値が関係している?

なぜうつになるのか、その作用機序はまだはっきりとわかっていません。しかし、2015年なって、フィナステリド5mgを長期服用すると、ED症状の悪化とテストステロン値の低下が起こるという研究結果が発表されています。

プロペシアはフィナステリド1mgですが、同じような副作用が起こる可能性はあるということです。テストステロン値が下がれば、やる気がなくなる、疲れやすくなるといったうつ症状が出ても当然です。

また、プロペシアで男性ホルモンをコントロールしているわけですから、ホルモンバランスが崩れたり、精力の低下が引き金になってうつ状態になることは容易に想像ができます。

うつ症状が出て心配な人は、クリニックでテストステロン値を測定してもらっても良いかもしれません。

プロペシアが神経ステロイドを減少させる

神経ステロイド(=アロプレグナノロン)の減少

プロペシアの有効成分であるフィナステリドは、腦脊髄液内の神経ステロイドの量を減少させることがわかっています。

神経ステロイドは脳内で作られるもので、脳の興奮性を調節する働きがあります。具体的には、気分を安定させるの重要な役割を果たしているのです。

神経ステロイドの代表的なものとして、アロプレグナノロンがあります。脳内で、女性ホルモンであるプロゲステロンはアロプレグナノロンに代謝されます。

女性は月経前になるとイライラする、気分が落ち込む、眠くなって疲れやすい、等さまざま不調が現れる人が多いのです。

しかし、これは月経前にプロゲステロンが減る=アロプレグナノロンも減る=脳の興奮を調節できなくなる=気分が不安定になる、ことから起こる症状です。

プロペシアがもたらす作用

男性もプロペシアを服用すると神経ステロイドが減少するため、同じように脳の興奮を調節できなくなり、女性の月経前のように気分が落ち込んだり、やる気がなくなったりうつ症状が現れると考えられています。

「ホルモン」って生きていくうえでほとんど気にすることはないですが、体の中でものすごく重要な役割を果たしているのだなと感じますよね。

海外の副作用(鬱・自殺願望)勧告事例

韓国

韓国の食品医薬品安全処が出した勧告では、次のような内容になっています。

「プロペシアなど、フィナステリドを成分とする脱毛症、前立腺肥大症の治療薬を服用後、うつ病、自殺念慮が起こる可能性がある」という警告表示を義務付けることにしました。
参考元:http://www.ytn.co.kr/_ln/0103_201707040755031455

医薬品の取扱い説明書で、日本では「添付文書」と呼ばれる文書に表示されるもので、韓国内98社、142品目が対象です。

韓国MSDは国外で起きている副作用、特にポストフィナステリド症候群(PFS)について、その状況を報告。事の重大性が認識され、韓国内で警告として表示されることになりました。

この決定は2017年7月のことで、ヨーロッパに先がけて出されたものです。

欧州諸国

フィナステリドの後遺症専門の研究機関、PFSF(PFS財団)からの報告です。

先に勧告されたイギリスと韓国に続き、ヨーロッパでも欧州医薬品局から勧告が出されました。うつ病と自殺念慮の副作用(後遺症)について、警告を表示することの勧告です。

対象はEU加盟28ヵ国など31ヵ国。対象人数は5億人以上とされています。なお、フランスの社会保健省は、すでに添付文書の改訂を実施済みです。

現状報告

PFSFでは、現状についての報告も行っています。

今期になって受けた報告では、新たに2件重篤な症例がありました。内容は自殺行動が1件、自殺念慮が1件。

統計を取り始めてから、自殺に関する報告件数の累計は51件に上ります。重大な症例が見られるので、さらに周知・警告を進めることを求めています。

さらに、患者に対しては監視を続けること、及び、精神症状を発症したら医師にアドバイスを求めるよう助言すべきとしています。
参考元:Post-Finasteride Syndrome FOUNDATION

日本では?

さて、日本国内ですが、対策はないも同然。ユーザーの関心も、服用中の副作用である生殖機能に集中しています。

結果が重大なわりに関心は低いまま。ヤフーニュースや週刊誌で散発的に取り上げられましたが、たいていはそのまま忘れ去られます。

プロペシアの添付文書を見ると、勃起機能不全など性機能障害については、「投与中止後も持続したとの報告がある」との文言があるのみ。

精神症状については抑うつの可能性のみ記載され、自殺念慮などは後遺症も含め全く触れられていません。

副作用(鬱・自殺願望)は医師も知らない

最近のメディア報道では、週刊現代の記事がありました。内容は、PFSを発症した男性と、診察した医師に取材した記事です。

本人がPFSのことを知らなかったのはともかく、AGA治療を扱う医師も知らなかったそう。販売元MSDは、医師への周知すらしていないんですね。

担当医師は厚労省の担当機関、医薬品医療機器総合機構に発症を報告しましたが、積極的に対処する姿勢は感じられなかったとの事です。

日本国内では注意喚起はおろか、無為無策の危険な状態がしばらくは続きそう。使うなら、せめてAGA専門クリニックの処方にすべきでしょうね。

プロペシア服用を諦めるか、うつ病と付き合うか

マイケルアーウィング博士の研究結果

アメリカのマイケルアーウィング博士が、2012年医学雑誌「Journal of Sex and Medicine」でプロペシアとうつ病に関する研究結果を発表しました。

それによると、「プロペシア服用者で精力の低下を自覚している患者群」と「AGAだがプロペシアを服用していない患者群」を比較したところ、プロペシア服用患者群のほうが明らかにうつ症状スコア(BDIテスト)が高かったそうです。

まだはっきりとした作用機序や因果関係がわかっていないものの、プロペシアと精神障害・うつ病はまったく関係ないとは言い切れないのが現状です。

もしも?と思ったら早めに医師の診断を

万が一プロペシアでうつ病になったとしたら、うつ病の治療のほうが大変かもしれません。うつ病は症状が進むと、働くことさえできなくなる可能性があるからです。

プロペシア服用を諦めるか、うつ病になる可能性があってもプロペシアを飲むかは、個人の判断になりますが、飲み始めて急に気分が不安定になる、やる気がおきないと感じたら早めに医師に相談したほうが良いでしょう。

まとめると、

  • プロペシアの副作用でうつ症状が出る可能性がある
  • テストステロン値が低いと筋力が低下し疲れやすくなる
  • フィナステリドを長期服用するとテストステロン値の低下が起こる
  • フィナステリドは腦脊髄液内の神経ステロイドの量を減少させる
  • プロペシアの影響で神経ステロイドが減少するためうつ症状が現れる
  • 薄毛治療よりうつ病治療のほうが大変なので医師に相談するべき